帰港後、桟橋に小さな変化があった。上写真をご覧いただきたい。仁尾マリーナのオーナー諸氏が任意で集まり作ったNYOC(仁尾ヨットオーナーズクラブ)が、かねてよりマリーナ側に要請していた強風対策用にチェーンループを桟橋本体に取り付けるという案が採用されたのである。(クリート横に布カバーされているのがチェーン)
ご承知の様に、艇は桟橋のクリートを介して係船されているが、艇サイズにあわせてのクリート位置調整を可能にするため、桟橋本体に有る溝にクリートをスライドさせて挟む様に固定している。このスライド溝の金属が経年変化で劣化し、強風時にクリートごと飛んでしまうという事象が発生する様になった。これを完璧に回避するには桟橋の大幅な改修が必要となる。それには膨大な予算がいる。そこで、NYOCが提案したのがこの方法。200V給電対応に続き、この数年の仁尾マリーナの前向きな姿勢には驚くものがある。感謝したい。
さて、油水分離器の件については、帰港後直ちにベテラン整備士の0氏がスピーデイに対応してくれ、更にトヨタマリン側にも照会して原因の特定に努めてくれた。結論は「油水分離センサー」の誤作動という事になった。この事例は、他の同型艇(P0NAM−35)にも出ているとのこと。説明によれば、「センサーの中に水に浮き油に沈むフロートがあり、これが浮くと(燃料内の水分量に反応するという事らしい)通電する仕掛け」になっているそうだが、艇が波にたたかれる際にその衝撃の伝搬如何によっては油中であっても浮いてしまい、誤って通電することがあるのだという。このフロートの動作範囲は5ミリ程度だという。このフロート動作範囲5ミリという説明は、ふに落ちないが、とにかくセンサーの現物を見るまではと思っている。
その判断に至った最大の理由は私が「警告メッセージは出たが、エンジン出力の低下がなかった。その後は波にたたかれない様に減速した結果、警告音は出なかった」と伝えたからの様である。O氏からは念のため油水分離器内の水のたまり方も見て、多ければ燃料タンクの水抜き、そしてフィルター(左右各1個)も交換提案もあわせてあった。
因みに、比較的低出力のディーゼルエンジン(排ガス規制対応以前)の場合は、噴射圧力が低いため燃料の質に割合寛容だそうだ。PONAM–35の場合、排ガス規制をクリアするため完全燃焼を可能とする超高圧噴射と電子制御の「コモンレール」噴射システムを採用したディーゼルエンジンを搭載している。エンジン自体はヤンマー製、日野自動車製、あるいはランドクルーザーのマリナイズした物と様々な噂があるが、船検証を見る限りトヨタ製と書かれている。
確かにその昔(30年前)、燃料タンクの針が半分ぐらいになった状態で荒天航海すると、底に溜まった結露水と軽油がタンク内でまるでシェイカーで振る様に混ぜられ、黒い煙を出しながら出力低下を起こしたことがあった。あれは新島と神津島の間の海峡通過時であった。
以来、揺れてもタンク内で燃料が踊らない様に常に満タンにす事を常としていた。あれから30年、エンジンルーム内の立派な油水分離器とフィルターの進歩に信頼を寄せすぎ、この原理原則を失念してしまっていたのだった。
クルーズ終了後の艇内外清掃を終えてみると、仁尾マリーナ名物のサンセットの時間になっていた。その夕日に見送られて、艇を後にした。これでようやく、2020 第2回夏の炎天猛暑クルーズ(上蒲刈島往復)が終わった。