ボートで行くクルージング三昧

ホームポートを瀬戸内海(仁尾マリーナ)に移してクルージングを楽しんでます

岩城島「かみじまちょう・いわぎ海の駅」に到着

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9時10分に「上蒲刈島」を出航して、10時10分に岩城島「かみじまちょう・いわぎ海の駅」に到着した。無風で海面は鏡のよう、さらに追い潮も加わったため、想定よりも早く着いた。この海の駅も出発地の「かまがり海の駅」と同様に、給電、給水設備は無い。トイレはフェリーターミナルが反対側に見える赤い桟橋の前にあるので、ここが使える。上島町の海の駅と言えば、弓削島にある「かみじまちょう・ゆげ海の駅」が有名だが、既に何度も寄港しているので今回はこの地を選択した。しかし、今日も炎天猛暑、かれこれ1週間ぐらい続いている。午前中移動、日中は冷えた船内で休息、夕方から活動開始を繰り返しているが、それでも好きな事をやっているので楽しい。

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さて、この海の駅は事前の予約が必要で、使用許可申請使用許可申請について)を事前に郵送しておいた。係船料はトン数基準のため11円、桟橋前にある役場にて手続きし納付書をもらって、隣のJAにて支払いをする。貰う方も払う方も笑いながらの処理となる。

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このレグでは少々緊張感を強いられる瀬戸の通過がある。「大三島」と「伯方島」を繋ぐ「大三島橋」をくぐって「鼻栗瀬戸」を抜けるコースである。約7ノットという潮流が渦を巻く中、狭くてそれも進路が直角に曲がっている海峡は、小説「村上水軍の女」の中でも描かれている。ヨットの場合は、転流時間に合わせての通過が必須となる。(ヨットの機走スピードは5〜8ノット)今回はたまたま海峡内に通過中の本船がいなかったので、潮に押される形で一気に20ノットで走り抜くことができた。

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これが「鼻栗瀬戸」にかかる「大三島橋」。しまなみ海道を構成する橋でもある。この写真は西側からのものだが、橋通過後、小さな塔がたっている鼻(左奥に写っている)を左に直角に転舵して走るコースとなる。曲がった直後に同じく反対側から通過してくる本船に遭遇すると思わずラット(舵輪)を握る手に力が入ってしまう。

距離的にも目と鼻の先の関係にあるこの「岩城島」と「弓削島」の海の駅。今回の「岩城島」寄港で比較が可能になった訳だが、総合的に判断して「弓削島」に軍配が上がる。例えば「弓削島」には桟橋のすぐ目の前に「ゆげ海の駅舎」なるビジター艇向けの建物があり、その中には綺麗なトイレ、コインランドリー、キッチンがあり、桟橋では給水、給電(100vのみ)施設もある。さらに「インランド・シー・リゾートフェスパ」に行けば、素晴らしい大浴場を使わせてもらえる。鮮魚もすぐそこの「魚六」で調達できる。それでも尚、「岩城島」を選ぶとすれば給油の利便性があるからである。ボートの場合、これが優先される場合が多い。「弓削島」では、目の前にGSがあるにも関わらず、配達する軽トラローリー車のホース(10m)の関係で対応できず、GSが用意してくれるリアカーにポリタンクを乗せて(一回に3個)給油を繰り返さねばならない。干潮時は桟橋までのスロープが急になるので炎天猛暑では大変な重労働となる。その点、「岩城島」では軽トラタンクローリー車が桟橋まで入って来られるので楽である。

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岩城島」の名産品の一つに写真の「芋菓子」がある。一言で言えば、岩城島産の芋ケンピであるが、芋ケンピという呼び名は高知県の商標であるため、「芋菓子」と記載せざるを得ない。ここの製造元が海の駅から5分のところにある。その名を「タムラ食品」という。作業場で暑さでけだるそうにしていた職員に声掛けしたところ(社長らしい)、売ってくれるという。「芋ケンピと、呼べないのは市場シェア7割を誇る高知県のメーカーがこの名で商標登録しているため、当社は芋菓子と呼ばざるを得ない。かつては岩城島に20軒のメーカーがあったが、今は当社だけ、1社では名産品と呼ぶ事すら恥ずかしいよ」などと謙遜することしきり。「せっかく岩城島が青レモンの島で売り出しているのだから、レモンケンピ?にでも挑戦したらどう?」と水を向けても首と手を大きく振りながら、「程々に回ればそれで良い。無理して製造ラインを増やして苦労するより、楽のできる今の方が良い。島にいる限り、贅沢をしなければ生きていける。それで良い」と、これまた笑いながら、前向きモードゼロの返事。でも、帰り道を歩きながら「確かに、そういう生き方もある。皆が増収増益を目指す必要はない。今の自分もそうでは無いか」と気づき、思わず苦笑い。

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燃料給油以外でこの「岩城島」に来る動機に上写真の「よし正」を推挙しておきたい。たまたま岸壁で知り合った島の有力者風の人から紹介され、一緒に出かけて入った店である。仁尾マリーナの船仲間、T氏からも推薦されていたのでためらいなく入った。聞けば、オーナーが超有名な有名料亭で修行し、そこでの栄達を捨て地元に戻って、「岩城島」No.1の店を作り上げたというバックストリーが聞こえてきた。確かに、見れば彼にはオーラもあり、加えて彼を支えるスタッフ、板前諸氏の仕事ぶりが素晴らしかった。いわゆる「箱良し、客良し、料理良し!」の店である。またもう一度来たいという思いを形にするため、焼酎を一升瓶でボトルキープしてきた。

 これまで瀬戸内海島巡りを何度も行い、訪れた島の数もかなりの数になりつつある。それらを離島開発、地方再生という観点で見ると、この島には大いにポテンシャルがあると思う。人口を支える雇用面でもこの島は生きている。例えば船舶ハッチで高いシェアを有する「岩城テック」という超優良地場企業の存在、この島と「生口島」を繋ぐ新橋工事が進んでいるのでさらに雇用の場が確保されている。そして、好立地にある「菰隠温泉」とその専用桟橋、「青いレモンの島」に由来する地産物、諸条件がこんなに整っている島は珍しい。

でも、今一つ島にオーラが出ていないのは「青いレモンの島」で売り出した時の中途半端な成功体験で満足してしまったのでは無いか、あるいは挫折感で疲れてしまったのでは無いだろうか。いずれにしても新しい橋の完成を前にして、この島をグランドデザインして語る力、すなわち目的を創るリーダーが現れることに期待したい。

「よし正」の酒と料理に酔ってしまった一晩となった。