ボートで行くクルージング三昧

ホームポートを瀬戸内海(仁尾マリーナ)に移してクルージングを楽しんでます

POMAM-35(アルミ艇)の海上係留を再び考えてみる

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2020年9月の連休も終わり、マリーナはいつもの静けさを取り戻してきた。私はこの7月、8月のコロナ禍の中にあっても、行く先を選んで瀬戸内海クルーズを行なったが、稼働日換算ではわずかに10日にとどまった。この3年で最も少ない稼働となった。考えれば、今年6月から海上係留に切り替えたので、4ヶ月近く海上係留艇として桟橋にじっと浮かんでいた事になる。船底の汚れは気にはなっていたが、この6月に新規に船底塗装(ハル塗装、防染塗装)して桟橋に繋ぎ4ヶ月しか経っていないので、それほどではないだろうとたかを括っていた。

本日、来週からの10月秋クルーズに備え、事前のテスト走行をしたところ、3,000回転あたりから振動が発生し、艇速、回転数共に上がらなくなった。これまでの経験からペラに何かがひっかっているに違いないと判断、早速帰港して上架してみたところ、上写真の如くペラにフジツボが付着、この状態はフラップ、船尾の外付け振動子、バウスラスターペラ、排気管出口にまで及んでいた。正直、フジツボの付着は私の想定以上、これには驚いた。

「このペラに付いたフジツボこそが振動の原因」と、駆けつけた整備のO氏が指摘、その結果、この週末は船底清掃をしなければならなくなった。その後は整備に引き渡して、剥がれた所の再塗装をお願いする事になる。秋クルーズのスタートは最低でも一週間は延期となる。クルーズから戻った後の艇保管をどうするかだが、海上係留を続けるか否かは考え直すかも知れない。実際、船底のフジツボ剥がしは、かなりの切り傷出血を伴うことになるので悲惨である。そうなら無いためには、今までの様に毎度上架して洗う方が、フジツボの付着の量も少ないし、第一直ぐに取れる。

さてここで今考えていることを整理してみた。やってみて分かったことだが、アルミ艇であるPONAMの常時海上係留は、かなりの覚悟を持って決めたほうがよさそうである。実体験して初めて分かった覚悟とは以下の通り。ただし、ここまで体系的にアドバイスをしてくれた人はいなかったがこれは致し方がない。何しろ、当マリーナにはアルミハル艇は一隻しかないのである。それで、全国に散らばっているアルミ艇オーナー諸氏のために共有しておきたい。

①銅イオンフリーの防染塗装の限界

アルミ艇の船底塗装(ハル塗装、防染塗装)にはいずれも銅イオンフリーの塗料を使うが、これは電触リスク軽減の為。「その分防染効果が悪くなる。FRP艇ではそのような事はない」とは、今日この事態になって初めて聞かされた。初耳である。しかし、そもそも、今年計画していた約2ヶ月の日本海クルーズのために船底塗装を新たにしたので、これは致し方ない。何しろ、寄港を計画した港は北前船が立ち寄った港で、上架施設のあるマリーナではない。これまでの経験からは(今年のようにコロナ禍で)長距離、長期間のクルーズをしないなら、あるいは乗艇が日帰り、週末スタイルならアルミ艇の場合、船底の維持管理がFRP艇とは違いデリケートなのでに陸置保管の方が良いと思う。

 ②それでもアルミ艇を常時海上係留するなら、防染塗料は自己研磨型にして夏は週一走行

海上係留するなら自己研磨型の防染塗装は必須となる。ただし、ベタにずっと桟橋に繋ぎっぱなしはダメである。銅イオンフリーなので防染効果は弱いので、水温の高い夏なら、1ヶ月桟橋にベタずけすれば船底全体を覆う様にノリ、フジツボがつく。そこで、「1週間に一回、海上に出て高速で走ると良い。そうすれば自己研磨型であるが故に塗料とともに汚れも一緒に剥がれていく。それでも、エンジンの海水取入れ口、トイレの排水口、船尾フラップの稼働部分などに付いたフジツボは残ってしまう」とは整備担当のO氏の助言。一方、ペラ、シャフトの塗布されたペラクリンは絶大な効果があった。ただし、高速で走るパワーボートの場合、軽微な浮遊物にでも当たれば、塗装は直ぐに剥落し、そこにフジツボがつきやすくなる。夏ならこれもハル同様、ベタずけ1ヶ月でペラ振動が発生し、船底のフジツボも加わって回転数もスピードも上がらなくなる。ギヤ比が低いPONAM−35なら尚更である。

③マリーナ契約は、船台確保の視点で見直し

そうなると、マリーナとの契約も合わせて考えたほうが良い。「海上係留契約し、さらに陸置時に使っていた船台の保管料を払う」というやり方が良い様である。私もそうしている。経済面では少々コスト高になるが、特に夏シーズンは船台の確保が難しくなりやすいのでこうしたほうが良い様である。(船底塗装するに際しても乾かしながら多重塗りをするので、雨でも降れば船台使用期間が延びてしまう)

④時間的にも距離的にも長く乗らないオーナーなら、船底塗装なしで陸置保管がベスト

PONAMで海上走行している時は、いつもながらアルミハル性能に魅入ってしまう。荒れた海上では尚更である。しかし、これはこだわりであって、その分維持に手間がかかる。費用も当然かかる。これが嫌なら、普通に堅牢に作られているFRPハル艇で十分である。それでも、アルミハル艇を選択するなら、陸置保管がベスト。全ホームポートの佐島マリーナではそうしていたので、船底塗装も不要で、メンテの問題も全くなかった。

話は横にそれるが、堅牢の定義だって、構造設計のプロでない限り正しくは分からない。衝撃音と振動だけで議論しているのが実情である。衝撃、振動とは荒天時の向かい波の中、艇が思いっきり叩かれる際のあの衝撃音の事である。この音を聞くと、艇体に亀裂が入ってハルが割れているビジュアルを一瞬頭の中に浮かべてしまうのである。嫌なものである。衝撃をアルミ超合金の硬性力と構造材で分散させるPONAMと、面全体で分散吸収する構造材のあまり入っていないFRP艇とでは衝撃音も振動も違うのは当たり前。

瀬戸内海をちゃちゃっと走るくらいなら、FRPハルに銅イオンのたっぷり入った船底塗料を塗って海上係留して、浮かぶ別荘として楽しむ幅を持ったほうが正解という考え方にも一理ある。

船底塗装の結果は以下の通り。

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このブログを読んでくれていたトヨタマリンのO氏から昨日、以下の回答があった。

「アルミハル海上保管の弱点は御察しの通り塗料の限界です。…… 近年は特に海水温が高く2週間ボートが稼働しないと徐々に貝類が成長して抵抗が大きくなります。夏場快適な走行を楽しみたいなら、水温が上がり始める5月下旬から6月に一旦上架して、都度ごとに下架をお勧めしています。業務船で多数使用されているアルミ艇は季節に関係なく、通年で稼働しており貝類が付着しにくいので、度々の上架整備を行うことはありません…」